もう既に僕等は機械の奴隷と成り下がって居た。の話

こういう記事を書いてもう一ヶ月半が経ちました。

 

takeshin619.hatenablog.com

 

(リンク先の記事を読んでからこっちを読んでください。)

 

機械の奴隷にはまだまだ成れそうにないと豪語してから、あれはそう一週間くらい後の出来事だったでしょうか。

 

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僕は友達と池袋で待ち合わせをしていました。

 

現代を生きる若者には共感されると思うのですが、最近の若者は待ち合わせをあまりキッチリ詰めません。

 

何時頃、どこの駅か。

 

前日に決めるのはせいぜいこの程度。

 

あとは待ち合わせの30分くらい前にどちらかから15分程度遅れる旨の連絡があり、待たされる方が細かい場所を指定して結局なんだかんだで30分遅刻してくる人を待つ。

 

これが現代の待ち合わせです。

 

昔はそうじゃなかったはずです。

 

前の日までに、何時何分きっかりに、どこどこ駅の何某を目印に会おうと決めていたはずなんです。

 

でも携帯電話の普及によりそんな必要は無くなったのです。

 

当日待ち合わせの時間に「どこ?」

 

三文字LINEするだけで出会えてしまうのです。

 

例に漏れず僕の池袋での待ち合わせもそのくらいふんわりとした、柔軟で、テキトーで、フレキシブルな待ち合わせでした。

 

僕の家から池袋に行くにはまず新宿まで行って、そこから山手線か湘南新宿ラインに乗り換える必要があります。

 

待ち合わせの十分前には着くように家を出ていた僕は、悠々とサカナクションを聴きながら新宿に向かっていました。

 

エモーショナルなサウンドに心を預けていた(表現がどことなく古い)午後5時半の京王線車内で、唐突に僕のイヤホンはブツリと音を立てて静かになりました。

 

ははーん。さすがサカナクション。奇想天外な曲を作るもんだなーと感心していたのもつかの間。

 

僕のiphone画面は明らかに異常な状態。

 

再起動をかけても全く反応してくれない。

 

まずい。非常にまずい。

 

待ち合わせ相手と細かい待ち合わせ場所を決めていなかった。

 

旭川駅程度なら待ち合わせもどうにかなるでしょう。改札は二箇所しかない上に、人のあまりいない駅をぐるっと一周すれば5分もかからず待ち合わせ相手と会えるでしょう。

 

しかし相手は天下の池袋。

 

完璧アウェイな土地の上に、出口や改札がいっぱいある。

 

情けないものです。

 

手のひらに収まりそうな薄っぺらい端末一つ動かなくなっただけで、人間ここまで心細いのかと思いました。

 

不安をいっぱいに抱えながら、とりあえず池袋に向かうしかないことは分かっていました。

 

とりあえず中央改札から出て、インフォメーションセンターの周りをうろうろしてみるものの、彼らしき人影は見当たらない。

 

しかしまあ打つ手はありません。

 

こうして広大な東京砂漠、コンクリートジャングルを徘徊するほか、僕に残された術はないのです。

 

途中公衆電話も見つけました。

 

伊坂幸太郎は言いました。

 

公衆電話を見つけられるかどうかは、その人の人間力によると。

 

こんなタイミングで公衆電話を見つけられるなんて、僕はなんて人間のレベルが高いんだろうと思いました。

 

ありがとう神様。

 

僕は初めて神に感謝しました。

 

都合のいい人間です。

 

しかし悲しい哉。現代人は電話番号など覚えていません。

 

電話番号はおろか、メールアドレスだって知りません。

 

知っているのはLINEの連絡先と、ツイッターのアカウントだけ。

 

知らずのうちにデジタル化された世界を生きる僕らにとって、公衆電話はあまりにアナログ無力。

 

以前バイト先の飲み会で店長が「昔は駅に伝言板があって、待ち合わせの時はどこにいるかを書けばよかった」などと言っていたのを思い出すも、2017年の池袋にそんなものがあるはずもなく。

 

神は死んだんだと思いました。

 

ありがとうニーチェ

 

しかし、手をこまねいているわけにはいかない。

 

どんなに池袋が都会で、人間関係が希薄な東京だと言われていようが親切な人はいるはずだ。

 

たとえ神が死んでいようと、仏様くらいは手を差し伸べてくれるかもしれない。

 

ここは恥を忍んで、

 

誰かに携帯を借りよう。

 

そう決心しました。

 

どうぞ笑ってください。

 

この間まで機械の奴隷になんかならないと、欅坂46が歌いそうなことをのたまっていた人間が、あっさりiphoneに魂を売り渡しているじゃないか。

 

そう思った人は僕に石を投げればいいんです。

 

そして、いつか池袋で待ち合わせ前に携帯が壊れた時

 

「ああ、あの時あいつを笑わなければよかった」

 

そう後悔して、雑踏に飲まれていけばいいんです。

 

しかし僕はそれを良しとしなかった。

 

すでに待ち合わせには5分遅れているものの、なんとか携帯を貸してくれる人を吟味しなければならない。

 

まずは老人を除外。そもそも携帯、特にスマホを持っていなければ意味がない。

 

老人用携帯なんていう不便なものを取り出された日には絶対に使いこなせない自信があります。

 

(だいたい簡単スマホとかいう代物ほど厄介なものないですよね。機能は簡略化するために色々隠されてるし、誤操作防止のためにこれでもかとばかりに画面を押さないと反応しないし。あんな馬鹿げたものを使っているからボケが進むんだと個人的には思います)

 

それから女性もパス。

 

「携帯壊れちゃって」で始まる新手のナンパだと疑われては敵わない。

 

し、ナンパするにしてももう少し知的でスマートな誘い方をしたいという謎のプライドがあるからやめることにしよう。

 

あとはサラリーマン。スーツと髪型ビシッと決めて、ボクちゃん常識人ですって顔をしながら、意外と心に余裕ない人が多いもんね。

 

それよりもお仕事終わりのお疲れのところ引きとめてしまう申し訳なさもある。

 

年下っぽい子たちもダメ。万が一にでも警察にお世話になるようなことは避けなければならない。たとえ冤罪だったとしても、

 

「携帯壊れた」女児に声をかけた男子大学生を逮捕

 

などという見出しが新聞に踊るようなことは何としても回避する必要がある。

 

となると同い年くらいの男子……。

 

とはいえあまりにイケイケな大学生もよろしくない。

 

スマホは借りれるかもしれないが、取り巻きたちに撮影されて

 

「変な奴いるwwwwww」

 

などとツイッターに晒された日には僕は社会的に抹殺されたも同然である。

 

しかしだからと言ってあまりにオタクっぽい人たちも考えものだ。

 

やたらとセキュリティがどうのと口うるさく喚かれるか、児童ポルノぎりぎりかと思われるような二次元幼女がロック画面だったなんていう気まずい状況はご勘弁願いたい。

 

こちらから無茶なお願いをするくせに、借りる相手を品定めした結果、手頃そうな(失礼極まりない)二人組の大学生っぽい男の子二人に携帯を貸してもらい、ツイッターにログイン。

 

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悲痛な叫びです。

 

この後なんとか待ち合わせ相手と会えました。

 

やっぱり僕らは、文明の利器なしに生きてはいけないんだと痛感した一日でした。

 

ちなみに後日アップルストアに持っていくと、僕のiphoneの状態を意識たかそうなヒゲメガネのお兄さんがmac bookに繋いで診断してくれ、無事に無償交換してくれました。

 

そのお兄さんは接客していない間はmacに繋いだキーボードで現代音楽みたいな旋律を奏でていて、どんな職場なんだよと思いながら、彼も僕も機械の奴隷と成って往くのだなあと思ったのでした。

 

おしまい。