北の国から想像力が飛んでくる話

以前、想像力の欠如の話をしました。

 

takeshin619.hatenablog.com

 

今回もその話を、真面目な話と一緒にします。

 

北の国のミサイルの話です。

 

 

 

いますぐに、北の国からのミサイルが日本に弾着するかと言えば、そうではないでしょう。

 

でも、これまで以上に北の国が追い詰められているのは確かで、アメリカが包囲網を着々と固めているのは確かです。

 

現在の状況を簡単に言えば、チキンレースです。

 

どっちが先に手を出すか、アメリカ(シンゴジラ風に言うと彼の国)と北朝鮮(と中国)はギリギリの所を攻め合っている状態だと考えられます。

 

そうのような状況下で、北の将軍様が、どこか特定の場所に狙いを定めてミサイルを発射する可能性は低いと思われます。ミサイルによって他国に損害を与えれば、米軍に大義名分をこれまで以上に与えて、タコ殴りにされるのは火を見るよりも明らかだからです。

 

となると、北の国が自らのちっぽけなプライドを満たすために取れる手段は限られます。

 

人のいない海に向けてミサイルを発射する挑発行動です。

 

僕はこれを日本海への産業廃棄物不法投棄と呼んでいますが、要はこれまでと同じ挑発行動が関の山である可能性が高いということです。

 

問題はアメリカが北の国に先制攻撃をした場合と、そこまでしなくても、北の国が打った挑発ミサイルを米軍が撃ち落とした場合です。

 

前者の場合はアメリカがこの機を逃せないと考えた場合です。

 

北朝鮮のミサイル技術と核弾頭の小型化技術は着実に進歩しており、核を搭載した大陸間弾道ミサイルがワシントンに到達する水準に達するのは時間の問題だと思われます。

 

アメリカが12年、イギリスやフランスは5年ほど、中国は6年ほどで完成させた核小型化の技術です。

 

いくら北朝鮮のお粗末な技術とはいえ、研究開始から15年ほどになるとなれば、そろそろ完成してもおかしくはないのです。

 

そう考えれば米軍にとって北朝鮮を叩くタイミングとしては今回が最後である可能性が高い。

 

ワシントンにまで届くミサイルが完成すれば、この後一生北の国にたかられ続けることになりかねないからです。

 

後者の北の国の挑発ミサイルを米軍が迎撃する可能性はもっと高いです。

 

前者の場合はいくら北朝鮮とはいえ米軍が先制攻撃しているため、国際世論や米国内からの反発に配慮する可能性がありますが、北の国が先に打ったとなれば迎撃は対抗措置でしかないからです。

 

これらいずれかの場合でも、事ここに至ったのならば、米軍は公然と北の国を叩き、北の国は躊躇なくミサイルをぶっぱなすでしょう。

 

そうなった段階で、日本の国土に被害が出る可能性は高い。

 

僕が北の国の狂った将軍なら、どうせ米軍にフルボッコにされるなら、相手国にも損害を与えてから死ぬようにすると思います。タダで死んでたまるかってもんです。笑

 

こうして日本にミサイルが飛んできた場合、日本は対ミサイル防衛を適切に実行できるのか。

 

日本だとどこが安全なのか。そういう話をします。

 

 

 

 

そもそも弾道ミサイルとはどういうものなのかから整理しましょう。

 

弾道ミサイルはその名前の通り、発射後大きく放物線を描いて落下するタイプのミサイルの事です。

 

発射直後に付属のブースターによって大きく加速し宇宙空間まで飛び上がります。

 

最大高度まで上昇したところでブースターを切り離し、今度は地球の重力に身を任せて文字通り加速度的に速さを増して落下。爆発する兵器です。

 

こういう兵器なので命中精度はそんなに高くありません。少なくとも、目標に向かってまっすぐ飛ぶ直射型のミサイルに比べるとその精度は落ちます。

 

そのため目標の建物や車両や地下壕のみを精密爆撃するピンポイント爆撃などには使用できないのが弾道ミサイルです。

 

しかしそうは言っても、例えばロシアなどの弾道ミサイルの弾着地点の誤差は200〜300mほどと言われていて、何千キロ何万キロと離れたところから300mぽっちの誤差でミサイルを打ち込めるんだからおっかないもんです。

 

そんなおっかないもんから日本を守るための防衛システムが現在2つ配備されています。

 

SM-3とPAC3です。 

 

その前に弾道ミサイルがどのような段階を経て打ち込まれるのかをもう少し細かく整理したいと思います。

 

第一段階として燃料の注入と発射があります。

 

液体燃料の注入などは時間がかかるので注入が開始されれば軍事衛星による監視で早期の発見が可能です。

 

この段階でミサイルが発射される前にこの発射機構を潰してしまおうというのがいわゆる索敵地攻撃と呼ばれるものです。

 

実は専守防衛を謳う日本でも索敵地攻撃は可能で、憲法上認められた自衛権のうちと解釈されています。(「坐して死を待たず」という鳩山一郎 元首相の発言が有名です)

 

しかし現実には敵基地まで届くような装備を日本は持っていないので、この段階でのミサイル迎撃(というかミサイル発射施設の壊滅)はできない状況にあります。

 

 

第二の段階がブーストフェイズ、上昇段階と呼ばれるもので、ブースターを使用して上空まで飛び立つ段階です。

 

この段階はまだ低速で飛行しているため迎撃の難易度は比較的低いのですが、発射地点に近づいて狙う必要があるため相手国への領空内に入らなければならず現実的ではありません。

 

 

第三段階がミッドコースフェイズと呼ばれる段階です。

 

これは弾道ミサイルがブースターによって打ち上げられ、宇宙空間を飛行している段階です。

 

これらを迎撃するために使われているのが前述したSM-3と呼ばれるイージスシステムを使用した防衛システムです。

 

イージスシステムというのは早い話コンピュータによってミサイルの探知やそれに対する対応を決定させ、迅速にミサイルを撃ち落とすシステムです。

 

200発ほどの目標を同時に追尾でき、10発ほどを同時迎撃が可能で人間が意思決定をするよりも早く効率的な防衛策を打ち出すことができるとされています。

 

このイージスシステムを使って大気圏外の高高度を飛翔するミサイルを撃ち落とすのがSM-3というわけです。

 

このSM-3を運用できるのはイージスシステムを搭載したイージス艦で、現在日本が保有しているのは8隻です。

 

僕の記憶が正しければ4隻が任務に就き、2隻が訓練、2隻が点検のローテーション出回っているはずなので、それだと同時に迎撃できるのは最大でも40発。

 

全弾命中できるわけではないですから20〜30発程度のもんでしょう。

 

これが第三段階でのミサイル迎撃です。

 

 

第四段階になるとターミネルフェイズ、終末段階と呼ばれる段階です。

 

これは大気圏外に飛び出したミサイルが落下し、再突入している段階です。

 

この段階で迎撃するためのシステムが日本各地に配備されているPAC3と呼ばれるものです。

 

ただこのPAC3の問題点は迎撃可能範囲が20〜30キロほどと短いことです。

 

例えば北海道だと千歳にしか配備されておらず、千歳と札幌は40キロほどの距離があるので北海道の場合は札幌さえもミサイル迎撃可能範囲外にあることになります。

 

このことからもわかるようにPAC3は元々重要施設をピンポイントで防御するものであって、国土全体をミサイルからカバーするようなものではありません。

 

だから首都圏のように近距離に幾つも配備されているような地域以外では、イージス艦からのSM-3が打ち損じたミサイルに対処する手段がなくなってしまうという状況にあります。

 

 

韓国ではTHAADと呼ばれるミサイル防衛システムが配備されています。

 

これは終末段階に入ってからの高高度で撃ち落とすことが可能なもので、いわばイージスシステムを用いたSM-3と射程範囲20〜30キロほどしかないPAC3の間の空白をカバーできるものです。

 

これがあれば現在空白となっている日本の国土の多くもカバーできるのですが、日本ではまだ一つも配備されていません。

 

今更配備に動いたところで、今回の北の危機には間に合わないでしょうし、それ以前に平和と無抵抗を履き違えたアホな人たちが反対して配備にも長い議論が必要になるでしょう。

 

それこそ森友学園問題みたいに。

 

日本がくだらない話で持ちきりな間に、世界の情勢は時事刻々と動いています。

 

北朝鮮を攻撃し、あの狂気の指導者を取り除かなければならないことは自明だったはずです。

 

核兵器を他国にぶっぱなすと公然と言い放ち、人様の国の領海に衛星と自称する兵器を次々に打ち込み、挙句他国民を拉致して返さないような国が、ここまでになるまで放置しておいたことがそもそも間違いだったんじゃないのかしら。

 

いつか、どこかのタイミングで、誰かがやらなければいけなかったことのはずです。

 

アメリカが北を攻撃すれば、アメリカに、韓国に、そして日本にも死者が出る可能性は大いにあります。

 

その責任は攻撃したアメリカやそれを支援した自衛隊には絶対にない。

 

臭いものに蓋をし、狂気の国から目をそらし続けた僕らの責任です。

 

平和を求めることと、兵器を持たないことは絶対に違います。

 

今回北からのミサイルが飛んでこなかったとしても、日本の防衛は対ミサイルに限らず脆弱すぎます。

 

ショートショートの神様星新一が年賀状にしたためた有名な文章があります。

 

 

 

ことしもまたごいっしょに九億四千万キロメートルの宇宙旅行をいたしましょう。これは地球が太陽のまわりを一周する距離です。速度は秒速二十九・七キロメートル。マッハ九十三。安全です。他の乗客たちがごたごたをおこさないよう祈りましょう。

 

自分がお利口にしていても、隣に座っている人がゴタゴタを起こせば、何の意味もないんですよ。

 

想像力を働かせましょう。

 

飛んでくるミサイル、見えませんか?